遊戯祭とデュエ祭

 1996年、週刊少年ジャンプにて遊戯王が連載開始された。遊戯王は当初こそ平均的な人気であったが、TCGトレーディングカードゲーム)を題材とした方向にシフトする事で国民的人気を獲得。さらに2011年には世界で最も販売数の多いカードゲームとしてギネス登録されるにまで至る。当然国内でのシェア率も高い。TCGが隆盛を極めたのはゼロ年代(2000年代)初頭だが、どこかの情報によると当時の少年の7割以上は何らかのTCGをプレイしていた経験を持つらしい。つまり、男子のほとんどは何かしらのTCGをプレイして育った。そんなゼロ年代に少年時代を送った子ども達こそがゼロ年代キッズである。

 かくいう私も、若干ゼロ年代キッズと言える存在だ。小学生時代をゼロ年代、中学高校時代を10年代に送っている。私の人生には常にTCGが関与している。様々なゲームを体験してきた。現在、私は今年4月に大学卒業をむかえる年齢だ。小学生時代から今に至るまで、常にTCGをプレイし続けてきた。その道のりは決して平坦ではなかった。なによりTCGは金がかかる。カードの値段は需要と供給のバランスで決まる。人気のないカードなら二束三文だが、人気のあるカードは1枚で500~2000円ほどの値がつく。そんなものを何十枚も集めるというのは、よほどの富豪でなければ苦痛を伴う。「もうこんな金を喰う趣味は止めよう……」と何度思ったことだろうか。実際止めようと行動に移したこともある。手持ちのカードを全て売り払ったのだ。カードが占有していたスペースが空き、心なしか部屋がきれいになった気がする。しかし、2週間もしないくらいだったか。部屋には元のようにカードが積み上げられていた。どうも自分は、カードを売り払っても気づいたら買い戻してしまうらしい。結局カードを売って得たのは、TCGと別離した生活ではなかった。預金残高を上回る額の請求メールと、激しい後悔のみだ。こんな調子なので、きっと私は死ぬまでTCGを止められないんだろうなと感じている。きっと似たような体験をしたり、似たようなことを日々思っている同年代の人は多いのではないか。かなり確信に近いレベルでそう思う。ネット上ではオタク趣味を持つおじさま方がガンプラで遊んではしゃいでいる様を見る事がある。私も将来的にはあの人達のようになるということだろう。まぁそれまで生きていれば、という注釈はつくが。

 そんな遊戯王が、去年(2021年)に25周年を迎えた。20周年以降の遊戯王はアニメがあまり面白くなかったり、カードがあまり面白くなかったり、ルールが大幅に変わったりなどで微妙な時期だった。が、最近は過去作のカードを強化する方向に力を入れ、見事に盛り返してきているのが素人目にも分かる。一番大きいのは、やはりアニメの終了だろう。バトルスピリッツなどの他ゲームではアニメ放映が終了することで店舗での取り扱いが縮小され、売り上げが落ちる……というような流れもあった。しかし、遊戯王はすでに国民的TCGとでもいうべき地位を確立している。しかもアニメに関しては過去20年もの間放送してきたという歴史がある。全部で6作あるワケだが、それぞれにファンがいることを考えると、もはや新作を作る必要がないと判断したのかも知れない。(まぁラッシュデュエルはその限りではないが)さらに、新作のアニメを作らなくて良いということは、アニメに登場するカードによって新商品の枠を潰さなくて済むという事でもある。新カード150種類収録の新セットが出たとしても、アニメ放映中であれば、少なくとも3分の1である50種類はアニメのカードを入れなくてはならない。また、サプライ品のセットを出すにしても現行するアニメキャラの商品でなくてはならない。これは私の個人的な見解なので間違っている可能性も大いにあるが、正直な話、PlayMakerのセットと不動遊星のセットが同時に出たら不動遊星のセットの方が人気だと思う。これはヴレインズが悪いと言うよりもむしろ「視聴者にとってヴレインズが思い出になっていない」というのが要因だと思う。当時あんなに嫌いだ嫌いだ言っていたゼアルですら、今ではとても愛おしく思える。ゼアルは思い出になったという事だ。メーカー側にもこのような思い出を共有する人員が増えたのか、最近の遊戯王はひたすら過去作を擦る思い出産業と化している。確実に売り上げは伸びているだろう。「新規も取り込まなくては先細りしていくのでは?」という不安もあるにはあるが、もう少し思い出に浸りたい。

 と、まぁ本来こんなに長々語るつもりはなかったのにベラベラと語ってしまう程度には遊戯王が好きである。そんな私だが、残念なことに、25周年にはあまり立ち会えなかった。ちょうど遊戯王のカードを買っていない時期だったし、何より金がなかった。バイトをやめた4年前からこちら、万年金欠。千年金欠原人である。おかげで満足のいく活動は出来なかった。

 このことを悔やみながら「30周年には収入を得られる状態になっておこう」と決意するしかなかったのだが……ここに来てデュエルマスターズも20周年を迎えた。なんということだ。デュエマは去年20周年をやってたのに。どうやら前回の20周年は厳密には19周年であり、20周年ではないらしい。ゆえに、今回のが「真の20周年」とのこと。20周年を2回やるとはこれいかに、という感じだが。しかし、これは非常に悩ましいところだ。正直、デュエマは前回の20周年で割と満足出来る程度には商品を買えた。実を言うとそこまでの渇望はないのだが……

 とはいえ、最近ようやく気づいたのだが、こういうのは祭りなのだ。偶然その場、その時に居合わせたものにしか味わえない連帯感や熱狂。そう言ったものを感じるためのイベントが周年イベントであり、遊戯祭でありデュエ祭なのだ(デュエ祭というイベントはすでにあるが)。多少なりともデュエマを愛しているものとして、やはりこの手のイベントには参加すべきだろう。この場に居合わせることができた幸運に心から感謝しながら。

問題があるとすればそれは

祭の参加費が高すぎる点だ