十三騎兵防衛圏 「ムービー過多に疲れたあなたに」

公式サイトより

 2019年にPS4でリリースされ、一躍話題となった十三騎兵防衛圏(以下、十三騎兵)。慢性的に品薄状態が続き、しばらくは新品が手に入らないばかりか、中古ですら新品並みの値がつく状況だった。とはいえ、このゲームは各方面で高く評価されている。それを鑑みるに、いつまで経っても価格割れしないというのは妥当なのかも知れない。需要と供給だ。人気があれば高い。人気がなければ安い。むしろ今の状況こそが、このゲームのクオリティを物語っているのではないか。分かるか? 「最強バトルロイヤル!!」よ。

攻略本より安い(ブックオフオンラインより)

 そんな十三騎兵だが、ついにSwitchで移植版が登場する。2022年4月14日発売予定。私も「この作品がすごい」みたいな話は何度も耳にしてきた(というか目にしてきた)。なので、これを機に手を出してみた。とりあえず、体験版を遊んでみることに。体験版は序盤5エピソードが収録され、公式によると「2〜3時間遊べる」らしい。実際プレイしてみると、たしかに2時間半で終了した。そして肝心の内容だが……これはかなり面白い。世間の評価も正当なものと感じる。今回はそんな面白いと感じた箇所を紹介したい。

 ストーリーが面白いとか、設定が面白いなどといった話はおそらく100人いれば100人ともする話だと思うので、ここでは割愛する。このゲームの面白さは開発元であるヴァニラウェアの面白さに繋がる。ヴァニラウェアの過去作には「オーディンスフィア」や「ドラゴンズクラウン」などが挙げられる。これらを見て分かる通り、ヴァニラウェアは2D横スクロールアクションが持ち味の企業だ。そしてその流れを汲むかのように十三騎兵でも2Dの画面が受け継がれているのだが……これが素晴らしい効果を生んでいる。つまり、「ムービーを排除する」ことに成功しているのだ。

 ムービーを排除するとはどういうことか。FFなどが最たる例だが、こう感じたことはないだろうか?

「昨今のゲームはあまりにもムービーが多すぎる」と。

私はFFが好きだが、胸を張って好きだと言えるのはせいぜいFFVIIIまでだ(ただしXIIのレヴァナントウィングは好きだ)。FFはナンバリングを経るごとにどんどんムービーが進化し、演出として発展している。FFXIIIに至っては、もはや実写映画と大差ないレベルにまで到達した。しかし、果たしてそこまでのレベルが必要なのだろうか? たしかにムービーがあれば演出をドラマチックに彩ることができ、感情移入もさせやすいのかもしれない。だが、そのためにわざわざプレイを中断させられるこちらの身にもなってほしいところだ。ダンジョン内を歩いていたらいきなり画面が暗転し、ムービー。数分後、またダンジョン内に戻り動く。するとまたムービー。こんなことを何度もさせられていたら途中でやる気を失う。私は映画を見にきたのではなく、ゲームをやりに来たのだ。少なくともFFにはそれを求めている。もし映画をやりたいなら、せめて最初からシネマティックアドベンチャーゲームみたいなジャンルで販売して欲しい。そうすればこちらもそういう腹積りでプレイできる。念のため申し上げると、私はすべてのムービーに嫌気が差しているのではない。やるドラ小島秀夫監督作品など、最初から「映画的なドラマを楽しむモノ」ならそういうつもりで臨める。ただ、「ゲームとして遊ぶモノ」というパッケージであるにもかかわらず、プレイアビリティを著しく下げてまで挿入されるムービーに辟易としているのである。「すべての映画はアニメになる」とは押井守監督の言葉だが、ある意味においては「すべてのゲームは映画になる」過程を歩んでいる……いや、既にそうなってしまったのかもしれない。

 あくまでも私にとってだが、ゲームに必要なのはグラフィックでも豪華声優でもない。『物語』だ。ここでいう物語とは、いくつかの意味がある。ひとつはシナリオライターが書いたモノ。もうひとつは、「このゲームをやっていたことで友達ができた」というようなプレイヤー自らが紡ぐ個人個人の人生の物語である。最低限必要なのはそれだけで、あとは割と余計なものなのではないだろうか。「圧倒的美麗グラフィック!」や「豪華声優陣!」などの宣伝文句は、中身のないゲームほど用いがちだ。とくに有象無象のMMOゲームアプリはみんな言ってる気がする。そうすることで集客を見込めるからなのか私には分からない。ただひとつ言えるのは、ひとりのユーザーである私が求めるものはアニメ映画のようなグラフィックでもなければCV花澤香菜櫻井孝宏のキャラでもないということだ。私はGBAとDSに人生の少なくない時間を割いてきたが、その中で感動したゲームは必ずしもボイスがついているものではなかった。もちろん、グラフィックもたかが知れている。それでも全く遜色なく楽しむことはできていた。昨今のゲームは過剰だ。ムービーが多すぎる……という説明をこんなに長々クドクドとしてしまうあたり、私も十分に過剰だ。ゲーム制作者たちがムービー挟みたくなる気持ちも実は分かる。つい、やっちゃうよね。

My Nintendo store より

 さて、話を戻そう。もうあなたはお忘れかもしれないが、この記事は十三騎兵の話なのだった。私はすっかり忘れていたよ。この十三騎兵は2Dで話が展開される。そして基本的にムービーが挟まることはなく、ずっと定点観測的にキャラクターの動作を見守るのだ。それはまるで舞台劇を見ているかのようである。FF的なゲームが映画の視点を用いる表現と呼ぶならば、十三騎兵は舞台劇の視点を用いる表現と呼べるだろう。おそらく万人がこの舞台劇の視点を好むということはないだろうが、少なくとも私は好ましく思う。画面内でキャラクターたちは演技をし続ける。それを暗転やロードなどで遮られることもなく、ただただシームレスに眺める快感。これは映画の視点ではなかなか出せない味わいだ。また、ムービーを挟まないことで、逆説的に全シーンがムービー的な側面を担っていることも無視できない。(無論、すべてがすべて自由というわけではないが)FFならムービーとして処理されるであろうイベントも平常時の画面で進行し、その間も主人公は動き回ったりできることもある。3Dモデルの進化やエンジンの進化などでゲームが映画っぽくなる流れは今後も続くだろう。そんな世界の中でもヴァニラウェアは異色の存在として全く別の道を歩む。そういう意思表示のようにも見えた。

一生ついて行きます! 神谷さん! まぁヴァニラウェアのソフト買ったことないんですけどね。

というわけで、十三騎兵は「ムービー過多のゲームに疲れた」という人には特にオススメしたいゲームだ。

 私の稚拙な文章ではいまいちピンと来なかっただろう。百聞は一見にしかずと言う。実物に触れればこんな記事が必要ないくらい理解できると思うので、ぜひ無料体験版をプレイしてみてほしい。PS Store、My Nintendo store でダウンロード可能だ。

そして気に入ったならぜひプレイしてみて欲しい。

繰り返すようだが、Switch版は4月14日発売予定である。Switch版が待ち切れないなら、PS4版を買うのもアリだ。

私と一緒に十三騎兵を防衛しようぜ(?)

西暦1985年で、

ぼくと握手!

ドゥンドゥン トーキョードームシティー