マキマ=林士平説 チェンソーマン
以前(https://bokutere.com/?p=1684)チェンソーマンを作者である藤本タツキの人生の反映として見ることを語った。
今回はその延長線上の話となる。
結論から言うと、マキマ=林士平と捉えることもできるのかなと感じたという話だ。
まず前回のおさらいだ。
2巻は基本的にこのメンバーで話が進行していくのだが、この構造が面白い。チームリーダーと部下の関係性が、ジャンプ編集者とマンガ家に見えるのだ。
(中略)
姫「アキくんのとこの新人(作家)はどう?」
ア「こいつは上手いなと思ったヤツもそうでないヤツも 1年もあれば死ぬ(引退)か民間(同人)に行きます」
作者の個人的な物語として見る【アニメの見方】より
公安には編集者的な性質を持つ者が居て、さらに、作家的な性質を持つ者が居るという見方も出来るというのが前回の話しだった。
(まあこの理屈のガバガバ加減については自分でも重々承知だ。「マンガ家=セルフプロデュース出来ない前提ですか?」とか「作家(新人)として入ってきたヤツが編集(リーダー)になるってどういうことですか?」とか突っ込まれたら返す言葉もないのだが、ここではご勘弁願いたい)
それを踏まえて、公安は集英社という認識で話をすすめよう。
マキマは編集者
この場合、マキマは作家と言うより編集者側の存在だ。
作家を縛り労働させるという数々の逸話と、マキマの所行には重なる部分がある。
マキマは主人公デンジにとって特別な存在だ。
ただ漂っていたデンジに住む場所を与え、仕事を与え、家族を与えた。
デンジにとってマキマは母のような存在と言えよう。
これはマキマという名からも明らかだ。
というか、作者自らが言及している。
(※チェンソーは木を切る道具。マキマはマ木マ。木を切るとママ、というヤツだ)
で、色々と与えた見返りとしてデンジを飼い慣らしていくわけだが……
この姿勢は編集と漫画家の関係に近い。
バクマン。などでも描かれていたことだが、編集者はマンガ家に家を買わせ、結婚させ、趣味を持たせる。
そうすると金銭的に働かなくてはならなくなり、ますますマンガに精を出してくれるという算段だ。
この点からも、マキマが編集側であるというのは信憑性を持つ。
マキマの正体
ではマキマは誰なのか?
答えは明白なのかも知れない。
創作物において、基本的に作者は主人公かライバル(ラスボス)に自己投影するケースが多い。
そしてデンジの「だからよぉ」とか「俺ぁよぉ」とかいう口調は、作者である藤本タツキと同じ口調だと言われている。
このことからデンジ=タツキと考えてみる。
すると、どうなるか。
デンジの上司であるマキマは、彼を絞り、仕事を与える。
ときには相談に乗り、アドバイスもする。
つまり、デンジの編集はマキマだ。
となると……マキマとは、タツキの編集である林士平ということになる。
林士平と藤本タツキ
林士平は、タツキがデビューした頃からの担当編集だ。
それどころか、タツキが高校生の頃はじめて持ち込みを行った際、対応したのは林だった。
林はタツキがデビューする前からタツキを見てきて、そしてデビューした後もタツキを見ている。
タツキも少年だったころから林という編集者を見てきた。
互いに気心知れた関係。
それはもはや、単なるビジネスパートナーと言うより友人や家族に近い。
タツキにとって林は子供の頃から世話になっている相手だ。
親や兄弟のように思っていてもおかしくはない。
そのような感情がマキマというキャラクターを作る際に、無意識的にでも反映されていたなら面白い。
林士平が契約したモノ
さて、マキマ=林士平説について語ったわけだが、
マキマ=林士平と考えると、ひとつ気になることがある。
マキマは劇中で、日本政府と契約していた。
では、林士平は何と契約をしているのか?
集英社だろうか?
いや集英社は日本と言うより公安だろう。
公安より大きく、かつ公安が属している国家日本……
それはひょっとすると「(日本の)マンガ界」そのものかもしれない。
現に林士平が主に行なっているのはジャンプのフォーマットでアフタヌーンみたいなマンガをやるという手法だ。
林士平はジャンプの編集者だが、ジャンプに忠誠を誓っているワケではない。
彼はマンガ界そのものに忠誠を誓っているのだ。
現在、ヒット作とされる作品群の中には林士平の担当した作品が多い。
林士平はこれからもヒット作を生み出し続けるだろう。
マンガ界との契約をもってして。
余談
とはいえ、林士平はマキマと決定的に違う。
林士平は作家のことを思いやり、作家のことを一番に思ってくれる。
ミリオンタッグでもそんな場面が何度かあった。
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↑もし私が担当だったら、ここまで辛抱強く作家と向き合えるだろうか……なんて思ってしまった。
・
無論、林士平を含むあらゆる編集者は慈善事業でやっているわけではない。
作家を上手く使い、ヒット作を出させる事が究極的な目的だ。
作家と編集は仲間であると同時に、利用し合う存在でもある。
その意味において、マキマと林士平のやっていることは、同じなのかもしれない。
ただ、一つ言えることがある。
それは「マキマさんよりも林士平の方がいい男!」ということだ。
ウホッ