いじめは無くならないのか?【なくなり辛い】
目次
▶︎いじめが問題となる現代
▶︎いじめとは何か?なぜ起きる?
▶︎気づかぬうちに加害者になるケースも
▶︎いじめは無くせるのか?
▶︎具体的な方法
▶︎まとめ
▶︎いじめが問題となる現代
学校のいじめ問題や、職場のパワハラなどで自殺に追い込まれる人が増えてきた昨今。
人類にとって「いじめ」という概念について、今一度考えるタイミングなのかもしれません。
というわけで今回はいじめに関する本を読みました。
ヒトは「いじめ」をやめられない 中野信子
テレビ番組などでもたまに見かける(テレビ見ないので知りませんが)脳科学者の中野さんが書かれた本です。
いじめとは何なのか?という問いに脳科学の観点から迫っていきます。
巷に転がっている、精神論系のふわふわっとしたカスみたいな文章に満足できない方にはうってつけです。
メンタルとかの話って、誰でも語れると思われがちなので適当なことをブログやTwitterなどで抜かしたりする人が大勢いますね。
実際は脳科学とか心理学についての知識もないのに適当な事とか平気で言ってるのでやめてほしいです。
▶︎いじめとは何か?なぜ起きる?
そもそもいじめとは何なのでしょうか。
文部科学省(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302904.htm)によれば、いじめの定義は以下の通りに記されています。
【平成18年度からの定義】 本調査において、個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする。 「いじめ」とは、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」とする。 (※) なお、起こった場所は学校の内外を問わない。○ 「一方的に」「継続的に」「深刻な」といった文言を削除○ 「いじめられた児童生徒の立場に立って」「一定の人間関係のある者」「攻撃」等について、注釈を追加※ いじめ防止対策推進法の施行に伴い、平成25年度から以下のとおり定義されて いる。「いじめ」とは、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍してい る等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な 影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該 行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」とする。なお、起こ った場所は学校の内外を問わない。「いじめ」の中には、犯罪行為として取り扱われるべきと認められ、早期に警察 に相談することが重要なものや、児童生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生 じるような、直ちに警察に通報することが必要なものが含まれる。これらについて は、教育的な配慮や被害者の意向への配慮のうえで、早期に警察に相談・通報の上、 警察と連携した対応を取ることが必要である。
長文ですが、要するに
「暴力とか精神的にイヤなことをされて、やられた人がイヤだと思ったら、それはいじめだよ」
という事です。
殴ったり蹴ったり、あとはみんなで無視したり暴言吐いたりとかがオーソドックスでしょうか。
そう言った類のものがいじめと呼ばれるワケですが……
そもそも何故いじめなんてものが起きるのでしょうか?
中野さんの本によると、その起源は原始の時代にまで遡るそうです。
かつて、人間は複数人で群れをなして行動していました。
※NHKの動画が短くて分かりやすいので、「あっこんな感じかぁ〜」と納得していただけるとおもいます。↓
人はとにかく貧弱です。
筋肉が大きいわけでもなく、爪や牙が鋭いわけでもありません。
そんな人類が生き延びてこられたのは、一重に
仲間同士で助けあって生きていたから。
みんながみんなのために全力を出すからこそ、人類は他の動物から抜きんでた存在になれました。(もちろん他の要因も有りますが)
しかし、逆に言えば、全員が全力で協力しないと生存競争に負けてしまいます。
そういうギリギリの状況で、一人でもサボるヤツがいたら、もうその時点で群れは全滅です。
いじめという行動は、このサボるヤツを排除するために発達したシステムなのです。
みんなが頑張ってるのに頑張ってないヤツを追い出すシステム、つまり、みんなと違うことをしている者を攻撃するシステム。
それがいじめの正体です。
時は流れ現在、我々は他の動物と戦うことは少なくなりました。
もういじめというシステムは必要がなくなったのですが……
今では「ちょっと周りから浮いている人」を叩きのめすとんでもないものに変貌を遂げてしまったというワケです。
ちなみに、いじめを行うと脳に快楽物質が分泌されるそうです。
まぁ、いじめを行う事で群れの生存確率を上げていた時代では、「いじめ=良い事」だったという事なのでいじめを積極的に行うように仕向けなければなりません。
脳がそういう形に変化していったとしても、不思議ではないですね。
▶︎気づかぬうちに加害者になるケースも
これを知って、「なるほどな〜」で終わらせようとするのは危険です。
なぜなら、いじめは誰もがやってしまう可能性が高い事だからです。
という事を友人に話したところ、
「いやいやいや、そんな事ないから😅」
と食い気味に返されました。
まぁ実際のところそんな友人はいないのですが、いたという体で話を続けます。
最初の方で、いじめは誰かに「イヤと思わせる事」をする行為だと説明しました。
しかしこれは、あくまで文部科学省が決めた定義。
身近なところでもいじめはいくらでも有ります。
例えばニュース番組で犯罪の報道を見て
「こんな奴は死刑だ!!」
と叫んだり
有名人の不倫騒動で
「けしからんヤツだ!!やめちまえ!!」
などと口にする人を見かけた事はないでしょうか?
実はこれも立派ないじめです。意外でしょうか。
犯罪を犯した人間とはいえ、その人の生い立ちなどの背景や精神状態など、考慮すべき要素はいくつもあります。
一概に個人の主観だけで口汚く罵ったりするのが許されるはずありません。
ましてや不倫なんて、巻き込まれた被害者は気の毒ですが、無関係の僕たちからすれば正直どうでも良い事です。
法律なり何なりがしっかりと罰してくれるでしょうから、本来外野が出る幕はありません。
コイツは犯罪者だ
↓
コイツは社会を乱す悪人だ
↓
コイツは人権がない
↓
思う存分罵ってやる!
例え犯罪者だろうが何だろうが、それを執拗なまでに叩く事、そしてそれによって脳内に快楽物質が分泌された時点でいじめです。
▶︎いじめは無くせるのか?
いじめは無くせるのか?という問いについて、中野さんは「不可能ではないが簡単でもない」というスタンスでした。
いじめが起きやすいのは、“和”を重んじるコミュニティ。
日本は特にその傾向が強く、
「吹奏楽部」のような全員の完璧な連携が求められる場面ではさらに発生率が高まるそうです。
逆に、フランスなどのような自己主張の強い国ではいじめがあまり起こらないそうです。
なぜなら、「みんながバラバラなので誰が“悪者”なのかわからず、いじめの対象が見つからないから」とのこと。
なかなかにコミカルな理由ではありますが、
変に形式張っていじめに発展するくらいなら、多少自由を認めるのもアリなのかも知れません。
まぁ、教育現場の人からひんしゅくを買いそうですが……。
▶︎具体的な方法
本書の中では、具体的にいじめの対策になりうる事がいくつか記されていました。
そのうち3つをご紹介します。
①弱点を晒す
心理学で「アンダードッグ効果」と呼ばれる効果を利用する手段だそうです。
自分の弱点、例えば、「仕事はできるけど絶望的に私服がダサい」とか「顔は良いけど声がカッコ悪い」など、
自分の悪い部分を包み隠さず相手に伝える事で
相手に
「コイツは叩く価値がないな」
「かわいそうなヤツだし味方してやるか」
と思わせることができます。
②物理的に距離を置く
いじめられたら、物理的に距離を取るのが効果できだそうです。
例えば学生であれば、いじめを受けたら週に1日だけ学校に行って、残りは保健室なりネット学習なりで教室から離れるなど。
いじめを受けるのはあくまでも
群の中で輪を乱す異分子なので、
いじめの加害者から距離を置くことで
「コイツは群れの一員じゃない。ただのよそ者」
という評価に切り替わり、徐々に規模が弱まっていくケースがあるそうです。
③防犯カメラ設置
なんだかんだこれが確実だそうです。
いじめは犯罪なので訴訟、しよう。
▶︎まとめ
・いじめは原始時代の人類の名残
→昔はサボるヤツを排除するシステムだった
・無くすのは難しい
→人間の理性とか倫理観に頼るのは賢明ではないかも
他にもいろいろと詳しく解説がなされています。
それらについては、ご自身の手でこの本を取り、目で読んでいただいた方がいいかと思います。
この本自体、200ページないくらいですし、なにより
文字も少ないので、サクッと読めると思います。
読む読まないは判断をお任せして、この辺りで失礼します。